桜花の囚人[an error occurred while processing this directive] "The prisoner of cherry blossoms."

Alice Arisugawa fan-fiction.
written by Kai shiinoya 01'- 04' May.

 ───桜が降っている。

 風にふわりとあおられた前髪をそのままかき上げると、辺りがやけに眩しく感じられて、私は目を細めて空を見上げた。
 どこからか、桜が降っている。
 辺りを見回しても桜の木の姿は見えなかったが、見えないだけでどこかで咲いてはいたのだろう。それとも、今の風が地に降り積もった花弁を遠い場所からここまで運んできたか。
 今年の桜は散るのが早い。
 いや、散るのが、ではなくて、咲いたのが早かったのだ。
 例年でいけば、今頃が満開だ。
 今年は花見───と称した飲み会───どころか、桜の花すらまともに見ることすら出来なかったが、それはしようがない。締め切りが重なって、どうしても外に出ることができなかったからだ。
 作家を生業としているのだ、締め切りがあるということを幸せに思うことで自分を慰めてはいたが、鮮やかに咲いて鮮やかに散る、あの命が短く潔い桜花を愛でることが出来なかったのだと思うと、なんだか随分と損をした気分になって仕方がない。
 薄紅色に視界が染まる。
 あの大樹の下で、春を感じたかった。
 ───などというのは、桜に対して夢を見すぎな表現だろうけれど。

 暖かい日だった。
 ───訂正。4月にしては暑い日だった。
 本当に、あと数日前であれば絶好の花見日和だったのに、と未練がましく思いながら、私は北白川にある友人の下宿先を訪ねていた。
 出迎えてくれたのは一人───いや、一匹。小次郎がちょこりと玄関に座っていた。
 そこにいたのは小次郎だけだったが、ウリの姿も縁側の方で足を伸ばしているのが見えた。桃の姿は見えなかったが、彼女はきっとこの陽気に誘われて外へ出てるに違いない。
 猫達の姿はそうして確認できたが、時絵ばあちゃんの姿が見えなかった。
 小次郎がこちらを見ながら小さく鳴いた。
 一声鳴いたそれが、いらっしゃい、とでも言ってくれたようで、少し嬉しい。
「元気そうやな。ばあちゃんはどうした?」
 手を伸ばしても、小次郎は逃げなかった。社会人になり、作家となってからはそれほど頻繁に来ることは出来なくなってはいたが、「割合に訪ねてくることが多い客」とは認識してくれているのかもしれない。
 頭をぐりぐりと撫でてやると、もっとというふうに顔を上げたので、あごの下を撫でてやった。
 ぐるぐると鳴る喉が、愛おしい。
「好かれたようだな」
 笑いを含んだ火村の声がした。
 階段の降り口に立つ彼の姿を目に留め、途端、私は挨拶よりなにより思わず声をあげてしまっていた。
「なんや、お前。その格好」

 誰も私を責められないはずだ。
 この男ときたら、どこのスジの者だと問われても仕方がない、濃紺の着流しなんか着ていたのだ。
「任侠映画にでもかぶれたか」
 驚き半分呆れ半分で聞くと、火村は眉を寄せながらひらりと手を振った。
「そういうんじゃない。もっと切実な状況だ」
 聞けば、火村もまた論文の締め切りを抱えていて、家と大学の間を寄り道をする暇もなく往復するだけの毎日だったのだという。
 そんな生活をしていたら、
「あっけなく着るものがなくなった」
 指差す向こうにははためく洗濯物の山。さらに第二陣が洗濯機の中で回っているらしい。
「そうなる前になんで早く言わないんだって、ばあちゃんに怒られた」らしいが、まぁ、火村としてはそんなことでばぁちゃんの手を煩わせたくはなかったのだろう。男として気持ちはわかる。
「洗濯機もやっと仕事を与えられて嬉しいやろな」
「おかげさんで、朝からはりきって回ってるよ。久しぶりでびっくりしたのか、2、3回止まったけどな」
 どんなぼろ洗濯機だ。
 そしてついさっき、とりあえず間に合わせ分として大学に着ていく分のスーツを残し、クリーニング屋に行ったのだというが。
「その格好でか」
 吹き出してしまった。どんな顔していったものやら。
「俺がいつどんな格好でいようが自由だ」
 いつもの事ながら、着るものに頓着しない奴だ。
 火村は、あがれ、というふうにあごを上げた。
 どんな格好をしていようと火村は火村だ。着てるものに左右されるような殊勝な奴ではない。
 促されて、私は靴を脱いだ。
 
 留守番を預かっているのだからそのまま火村の部屋に行くわけにも行かず、私たちは茶の間を借りてしばらく時間を過ごすことにした。小次郎とウリがそれぞれに、火村とじゃれている。
 着慣れない着物の裾を煩わしげに広げて、座り込む。
 もしここが火村の部屋であれば、四方を本に囲まれている火村の部屋だ、その姿はともすれば、私よりも作家然としていたかもしれない。
 そう言うと、火村は鼻で笑って胡座をかいた自分の膝に頬杖をついた。
「お前の頭の中にあるのは、あれだろう。芥川龍之介やら太宰治やら、その辺りの教科書に「文豪」の肖像としてのってる写真」
 その通りだ。
 まぁ、それら文豪と比べるには、火村の着こなし方はだらしないの一言であったが。
「───で、それは自前か?」
 私が知る限り、彼に着物を着るような習慣はない。
「ああ。───二度と使わないだろうと思っていたんだがな」
 その言葉に、そういえば、と思い出す。
 どんなつながりがあったのか、教授の代わりにとある茶会に出た、というのは、確か去年あたりの話ではなかったか。お座なりですますことが出来ず、わざわざ仕立ててたった一度の茶会に行った、と急な出費をしばらくの間嘆いていた。
 火村が和の正装でしおらしく茶など飲んでるところなぞまったく想像できず、
「お前に茶の心得なんかあったか」
 と聞いたら、不機嫌な溜息で返されたことも思い出した。
「見よう見まねで恥だけはかかずに済んだ程度だ。当然茶の味なんかぜんぜん覚えてねぇよ」
 それでも、ちょうど桜が満開の時期の野点で、この時期に茶会を開こうと思った奴とは友達になってもいいなどとも言っていたので、それなりにいい思い出にはなっているようだった。
 その着物が今年はこんな形で出番を迎えたのか。
 元はよいものであろうに、見事に着崩されて粋もへったくれもない状態になっているが。
「今日が天気いい日でよかったな。その姿もそれなりに快適やろ」
 通りにあったデジタルの気温計を思い出す。
 むしむしする暑さでなかったが、それでも部屋の中でこもるには苦しいだろう。
 火村はうんざりとしたように言った。
「じゃなきゃ、着ようだなんてなんて思わない」
「確かに」
 普段着ないものを、好んで着ようとする奴はいない。
 火村は膝についていた頬杖を崩し、とん、と指先でテーブルを叩いた。
「で、頼んでた奴は?」
 言われて、私はここに来た本来の目的を思い出し、持ってきた袋をテーブルの上に置いた。
「ちゃんと持ってきた」
 中には、火村に貸してくれと言われていた本が数冊入ってる。
 ごん、というおよそ本数冊の音とは思えない重い音に、火村が眉をよせる。
「なんだ」
「プラス、土産や。このあいだ、珀友社の花見があってな。その時の花見酒」
「ふうん?」
「───になりそこねた酒」
 そのへんの紙袋に適当につっこんできたので、見ためには日本酒が入ってるとは見えなかっただろう。
 火村が紙袋をのぞき込みながら言った。
「なりそこねたって、行かないで家に籠もってたのか」
「締め切りが重なってな。家にぎっちりと拘束されとったわ。お前は毎日大学の桜を見てたんやろ。咲き狂う桜並木の下を通って出勤か。ああ、うらやましいことで。せやから、桜を見損ねた俺につきあえ」
「どんな論理だ」
 苦笑して、火村は袋の中から酒瓶を取り出した。
「まぁ、うまい酒なら歓迎しよう。俺もまだ花見酒は飲んでない」
「なんや、お前もそうなのか」
「桜が咲いてるのは見たが、「咲いた」という事象を確認できただけだ」
 花見をしたからといって花を見るか、というとそうでもないのだから、ただゆっくりと時間をとることが出来なかった、ということだろう。
「随分、値段に気を張った酒だな」
 銘柄を確かめるように、酒瓶の包装をときながら火村が言う。
「俺の秘蔵や。有り難く思え」
「ふぅん」
 私の言葉になぞ、なんの感慨も持たなかったように生返事を返してきた火村だったが、
「───そうだ」
 と、何かを思い出したように顔を上げた。
 立ちあがる。
「ちょっと待ってろ」
 途中まで剥かれた酒瓶をぽんと渡され、なんだと問い返す間なく、火村は自分の部屋へと行ってしまった。
 一体なんなのか。
 無闇に手の込んだ包装を剥く作業を引き継いで、言われたとおり待っていると、しばらくして火村は手に箱を持って戻ってきた。
 両の手のひらにのるほどの、藍色の箱が二つ。
「なんや、その箱」
「この間ばあちゃんからもらったんだ。お前の分も預かってたんだが、最近会ってなかっただろ。忘れてた」
「…いつの話や、それ」
「2,3ヶ月前か?」
 しれっと答える。
「遅すぎや、あほ」
 テーブルの上に置く、その音がわずかに重く、見た目よりも質量のあるものであることが分かった。
 包装は、藍色の群雲染めのプリントなどではない本物の和紙だ。
 紙を止めているシールに書かれているのは、おそらく店の名前なのだろう。「堂」とついているその名と、手にかかるこの重さからいって何かの器なのではないかと推測できた。
「なんつーか……やたらと立派なモノに見えるんやが、気のせいか?」
「違うんじゃないか? 俺もそう見える」
 とてもそう見えているとは思えない無造作な手つきで、火村はがさがさと包装をといていく。大雑把でいっそ潔ささえある。
 綺麗な紙なのにもったいない、と思う私が小市民なだけなのか。
 剥いた包装紙をこれまた大雑把に畳み、その上に取り出した箱をのせる。
 ふわりと漂ってくる木の匂い。
 ふたには流れるような文字。
 なんと書いてあるのかまではぱっと見ではわからなかったが、銘、ではないのだろうか。
 何かいよいよ怖いコトになりそうな気がする。
 きゅ、と音を立てて、そのふたが開けられた。
 
 ─── 一番最初に目に入ったのは、濃く深い───藍色。
 
 それは、火村の来ている着物の色にも似ていたかもしれない。
 火村は小指を除いた四本の指で挟むようにしてそれを目の前に持ち上げた。
 小さな器だった。
 椀や湯飲みより小さい、それは、
「ぐい呑みか」
「ああ───お前の持ってきたそれに、ぴったりだろ?」
 藍色は内側の色で、外側は対照的に素朴な黒褐色だった。
 全体的に透明な光沢がかっているが、外面のわずかなざらつきとへらの跡に、光が滑らかに乱反射している。それが、華やかではない落ち着きを与えていた。
 私の持つ箱の中のぐい飲みも、やはり、最初に目に飛び込んだのは、深い深い藍。
 濃紺、と言ってもいいだろう。
 外側の黒褐色の色合いは、私の持っている方がわずかに濃いかもしれない。そしてそれは、下方にいくにつれて、青色へとグラデーションがかかっている。不思議な色だった。
 一目で、いい物であることが知れた。
 やはり、これは怖いモノだった。
 おみやげだなどといって、簡単にもらっていいものではない。
「…ホントにもらったのか?」
「受け取ったときからこれだったから、間違いはない。だいたい間違いだったら、ばあちゃんだって今の今まで黙ってないだろ」
 それもそうだが。
「ばあちゃんに礼をいっとかんとな」
 ……2,3ヶ月前のお礼か。
 ため息をつく。
 こんなものを、長い間忘れているなんて、この男は。
「お前……ほんま、遅すぎや」
「不可抗力だ」
「まぁええわ…いつ帰ってくる?」
「なんだか知らんが、もらいに行って来る、って言ってたな。すぐ戻るとは言ってたから、日が暮れるまでは戻ってくるんじゃないか?」
 言いながら立ちあがる。
「貸せ」
 火村はするりと私の手から器を奪い取り、水でざっと濯いで戻ってきた。
 まだ水で濡れるそこに、私の持ってきた酒を注ぐ。
 手に取る。その揺れによって生じた波紋。
 ───藍色が揺れる。
 藍に満たされた酒は、とろりとした質感をもったように思えた。
 すい、と呷ると、液体は喉を灼いて落ちていく。
 旨かった。
 
 
「いい酒だな」
 同じように一口煽った火村が、感心したように言った。
「俺の秘蔵や言うたやろ。ああまったく…これで桜があったらもう最高なんやけどな」
 いい器に酒を満たして花見。くそ、粋の極じゃないか。
 しみじみと多忙だった日々を呪う。
「場所によっては既に葉桜となっている時期なのに、まだ諦めがつかないか?」
「新緑の季節までは言ってるやろな」
 胡座をしてぐい飲みを呷る着流しの火村の姿は、どこぞの素浪人のようだった。居住まいを正せば、もう少し見れる姿だと思うのが。
「桜の花にこだわるのは日本人だけかと思っていたが」
 ゆらりと器を揺らし、そこに何が見えているのか、じっとそれを見つめたまま火村が言う。
「この間、ジョージが騒いでた。散る前に花見をしておかないと後悔するぞって」
「は。英国のウルフせんせも桜に魅了されたか」
「そうみたいだな。ゼミの生徒を連れ立って、花見をしにいったみたいだし───桜というものは、恐ろしい花だな」
 たった数日間だけ咲く花に、これほどまでに囚われる。
「何を今更。古今東西の詩人歌人がどれだけあの花を賛美し、散りゆく日を憂えたことか」
 私の言葉に、火村は唇の端を上げて言った。
「世の中に絶えて桜の───か?」
 古今和歌集の一歌だ。
 いい加減桜から離れられないでいる私をからかうつもりで言ったのだろうが、そんなものを持ち出して来た自体、火村も私と同じであるという証拠ではないか。
「───ふん、お前かて俺と大して変わらんくせして、一人で冷静ぶるな」
 火村がくつくつと笑う。
「今年は暖かかったからな。大学の桜も申し合わせたように一斉に咲いていた。───見応えがあっただろうな」
 その声に僅かに残念そうな色をにじませて、火村がゆるりと器を揺らしたとき、ふいに縁側の方でがたがたと音がした。
 
 それから、数人の人の声。
 ばあちゃんが帰ってきたようだが、お客さんか誰かと一緒なのだろうか。
 しばらく待っていると、玄関のほうからばあちゃんがやってきた。
 私の姿を目に止め、「あら」と驚いたように声を上げた。
「いらっしゃい、有栖川さん。久しぶりやね」
「お邪魔してます」
 火村が手に持っていたぐい飲みを置いて、口を開く。
「人の声がしたと思ったけど、お客さん?」
 荷物を、よっこらしょとすみに置いて、ばあちゃんは言った。
「とても一人では持ってこれんかったから、運んでもろたんですよ。火村さんにも、早う見せとうてねぇ」
 うれしそうに笑う。
「俺に?」
 火村が少し驚いたように声を上げた。火村も知らなかったらしいそれに、興味が引かれた。
「なんですか?」
「縁側、置いてあるから、おいでなさいな」
 ばあちゃんの姿が扉の向こうに消える。
 外から縁側に向かったのだろう。
 私と火村は中から縁側へと向かった。
 薄暗い部屋を抜けて縁側を望むと───時間が一気に逆戻りをしたような光景が目に入ってきた。


 ───桜が咲いていた。



 桜の大樹がそこにあったわけではない。
 高さとしては1mも無かっただろう。
 長方形の平らな鉢に植えられた、小さいものであったけれども、幹は鉢の端にあるにもかかわらず、枝は鉢の上をくねるように一杯に張り、花のつきも見事だった。その根本の処理も美しく、ただの「桜の盆栽」ではなく、桜の咲く一つの景色を切り取ったようなその姿に、私は目を奪われた。
「綺麗ですやろ? 知り合いに頼んでつくってもろてたんやけど、展示会までは、て言われとって。今日やっと譲ってもろたんよ」
 嬉しそうにばあちゃんが言う。
「本物…?」
 火村がぽつりと呟く。疑いの声になってしまうのも無理はない。この時期にこれだけの花を付けた桜の木をを見ることが出来るとは。
「もちろん、本物ですよ。元々遅咲きの種なんやけど、今日が展示会やったから、今日に合わせて咲くように調整してたんやて」


 ───遅咲きの桜。
 

「やられた」
 火村がどこか悔しげに、言葉を吐き出す。
 投げやりに、うんざりと───嬉しそうに。
「まったく……怖い花だ」
 笑った。


   世の中に絶へて桜のなかりせば
───この世に桜がなかったなら

   春の心はのどけからまし
───春はもう少しのどかに過ごせただろうに

 
 
 ───ああまったく。
 我らは桜に囚われ、逃れられない者達だ。





   * * *

 あたりが暗くなってもなお、桜の花は鮮やかに咲く。
 私たちは茶の間から桜の咲く縁側に場所を変え、桜をはさむようにして座り込み、暮れゆく日の中で杯をかわしていた。
 火村は去年と同じように着物を着て、桜を見ていてる。
 「火村にも」とばあちゃんが運んできた桜。
 季節の移り変わりを考える間もないほどに忙しい状態であっただろう彼を、一番そばで見ていたばあちゃんが運んできた「春」だ。
 あれからばあちゃんは、つまみもなく酒を飲んでいた私達に色々と作ってくれ、寄り合いがあるからとまた出かけていった。
 ぐい飲みのお礼はいうことができたが、ばあちゃんは「お土産を選べる人がいるということが嬉しいんやから」と笑っただけだった。ばあちゃんには、どんなに感謝しても足りないような気がする。
 胡座の上に頬杖をついた火村が言う。
「お前、旅行の予定はあるか」
「残念ながらない」
「俺も今は動けない。───となれば」
 カレンダーに目を走らす。
「狙うとすれば、母の日やろな。任せとけ」
 私にどれだけのお返しができるか、自分でもさっぱり期待できなかったが、自由な時間をとれるのは、火村よりも私の方が当然多いだろう。
 何を思ったのか、火村は無造作に手を伸ばし、指先で桜の花びらをぷつりと取った。
「なんや」
 不意の行動にいぶかしむ私の視線の先に、手を突き出す。
 火村は私の持つぐい飲みの上で、指を広げた。
 薄紅色が酒の上にはらりと舞い落ちる。 ふるりと震えて、それは藍色の波紋をそこに広げた。
 その、あざやかな色の対比。
 何を考えてそんなことをしたのやら。
 火村は無言だ。
 無言だったが───分かったような気がした。
 火村には桜の下でかしこまって茶を点てられているより、こうして気ままに注がれる酒を呑んでいるほうが似合っている。
 ふと笑いがこみ上げ、彼の方を見やると、目を伏せて手に持つぐい飲みを見ている火村の顔にも笑みが浮かんでいるのが見えた。


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